2020/02/25

根元数ミリ






母のリハビリの日に
私は、母の足を拭く。

素足を素手で持ち
股関節のストレッチを行ってくれるので
その時を思って
念を入れて拭く。


指と指の間や
足の裏の皺、踵
爪のキワ


綺麗になると
その日の仕事は
終わったくらいな気持ちになる。


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長い間
そんな母の足に問題があった。

外反母趾がひどく
親指は人差し指の下に
すっぽりと隠れるほどに曲がっている。

押されてしまってか
通気が悪かったのか

両親指の爪は
根元数ミリより上は
白く壊死した状態。

根元数ミリの
生きた爪に希望を抱き
ただ清潔にすることしか出来ないでいた。


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2ヶ月ほど前
シーツに血の跡を見つけ
辿ってみると
足の親指の爪が剥がれていた。

自分が痛いわけではないに
「うう」
と声をあげてしまう。


翌日来てくれた看護師に
相談すると
工具のような道具で
根元数ミリを残して切ってくれた。

剥がれていない方の爪も
危ないからと切ってもらう。

裸になってしまったような
両親指の爪を見て
心細くなったが

今までが嘘のように
健やかな爪が伸びて来ている。

なんだ
切ればよかったのか
と、調子抜け。


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寝たきりの一歩手前


そんな状態の母だが
両親指の爪を見ていると
身体は
生きようとしているのだ
と感じる。

あと、どれくらいで
すっかり爪が覆われるのだろうか。
3ヶ月、半年。

ささやかだが
喜びの一つです。




La lune
坂本 草子
soko sakamoto


photo
LuAnn HuntによるPixabayからの画像